「堕天使とボノボ」振り返り②

プロジェクト「Act」Tokyo 第三回公演「堕天使とボノボ」から早一ヶ月が経ちました。

今回は、各キャストに焦点を当て、ゲネプロの写真と共に振り返りたいと思います。

佐々木三恵さん


いきなりすごい人が来たなと思いました。8月、この公演のキャスト募集で最初に応募してくれたのは、佐々木さんでした。

24歳とは思えない物腰を持つ彼女は、晴夏の静的な面、思考する晴夏や日常的部分、日ごろ、妻や母、あるいは社会人として生きる晴夏、三谷晴夏という人間の基盤とも言える部分をとても強く出せていたと思います。


怜悧で、賢く機能的。会社に最も重宝される人間像。

本作で求めたかったそういう部分を彼女から垣間見ることができました。

対して、晴夏の動の部分。普段秘めている非日常的な面を出すことに苦労していました。静と動を活かせば活かすほど魅力が増す役だった分、この部分は伸びしろだと思います。

そしてこれは、後に登場する赤組の晴夏役である青木みなみさんとの最も対照的な部分でした。


中性的な魅力あるルックスを持っているだけに、今後の成長がとても楽しみな女優さんです。



服部愛香さん

普段、天真爛漫で少し高飛車気味の彼女が男性恐怖症の京子役を希望したことに筆者は驚きました。

理由は、「自分とは正反対の役をやってみたかったから」とのこと。

恐らく並みの現場では服部さんが京子に選ばれることはまずないでしょうが、アクトは、台本を読んだ上で可能な限り本人の希望を第一優先するという姿勢を取っています。


この方法は、彼女に関してはいい方向に働いたのではないかと考えています。

京子を演じている時は明らかに別人のようで、役が入り過ぎるあまり稽古中に体調を崩すことも……。

役の入り込み方は完全に筆者の想定を上回っており、赤組の京子役である川原夢貴さんも含めて、無事に千秋楽を迎えられるか本当にハラハラの連続でした。

彼女の存在は、白組では作品の華であると同時に密かに物語の方向を操る裏の中心人物のような役割となりました。

弾けるような笑顔といいい、感受性や表現力といい、光るものがある彼女ですがまだまだ、乗り越える壁はたくさんでしょう。「服部愛香」今後の活躍に期待です。



青木みなみさん

稽古場から帰りの道のりまで、いつでもどこでも信じられないくらいのお調子者で、重苦しい作風のせいで澱みそうな稽古場の空気をいつも明るく変えてくれていました。

常に股割りをしていて、お尻を床につけて両足を180℃開いた状態で頭が床につくことから見て(※あくまで筆者の予想ですが)彼女は股の関節が無いか壊れているかのどちらかではないかと思います。


また、最初のカフェの仕事のシーンの動きは青木さんの意見を基に出来上がったものです。

その彼女はやはり、晴夏の動の部分。

物語を動かすストーリーテラー性、晴夏の秘めた本性は強烈でした。そして赤組の中であって作品の支柱、あるいは母とでもいうような印象を持たせてくれました。

その分やはり晴夏の静の部分を動が被さってしまっていました。

しかしそこは、まだ22歳の彼女。できなくて当然、できない方がいい。芝居の最中も変わらず溢れるパッションを感じてそう思いました。



川原夢貴さん

演技審査で会った日の事が思い出せません。

それくらい彼女の性格には役が入り込んでいました。川原さんは台本や役に対して真っすぐに向き合う女優だからではないでしょうか。


よく「演技は嘘を見せるものだ」やそもそも「演技をする」「役を演じる」などと言われますが、間違いなく彼女はそれに当てはまらないタイプの役者だと思います。

彼女が感じているもの、彼女が発しているものはそのほとんどが川原夢貴であり竹内京子のように見えました。


役者が芝居で命を削る、そのしぶきが光を浴びて燦然と輝く瞬間というものを彼女は何度も見せてくれました。

筆者の反省は、この才能を生かせる演出をすることができなかったことです。

しかし、まだまだ課題はたくさんあります。その課題を克服してどんどんと次のステージに進んでくれることを願っています。



黒澤一郎さん

第一回公演「悪魔の涙」の勇太役以来のアクト参加でした。

彼自身、初の主演ということでかなり苦労もあったと思います。

写真もそうですが、日に日に窶れていくようで心配になりましたが、その分だけ三谷良介という人間に近づく事ができたたのではないでしょうか。


なぜなら三谷良介という人間は孤独な人間で、実際稽古場で彼は孤独でした。いい意味での孤独、そうでない意味での孤独、いろいろあったでしょうが、それが彼を役者として成長させたことは事実です。

この公演を通して彼なりに掴んだものもあるでしょう。

元もと感情の振れ幅が広いだけに、精神面での成長一つで大きく飛躍する可能性を秘めています。



姜旻知さん

前回の第二回公演「比翼連理の果て」に引き続いての出演でした。

過去ほとんどの時間を韓国で過ごしている姜さんは、前回の稽古ではセリフを正しいイントネーションで話すことに多くの時間を使いました。あれから半年も経っていないのですが、姜さんの話す日本語はほとんどネイティブに近づいていました。その点一つを取っても彼女の日頃の努力が伺えます。

今回は白組で紗希役、赤組で佐藤役を演じてもらいました。

まず佐藤は、彼女の素性が良く出ていたと思います。重いシーンが多い本作品の中にあって、佐藤として出ている時は舞台上がとても明るくなりました。


対して、紗希ですが、姜さん自身が持つ心の負の部分がよく出ていたと思います。

しかし、根本的な技術的な問題で今回紗希役を演じ切ることができませんでした。おそらく本人が一番分かっているはずです。

この点は姜さんであれば今後必ず克服できるでしょう。



佐藤健太さん

個性的なルックスの佐藤さんは、物事に対する視点も個性的でした。

演じて頂いた役は、晴夏や京子が働くカフェの店長。役柄としては、劇中で一切救われない悪役的な立ち位置でした。


脇役的な立場ではありましたが、稽古中は周囲をよく観察し、劇中での自分の役割を考え、ディスカッションを多くしてくれました。

彼のそういった行動が他の経験の浅い役者たちに今後良い影響を与えてくれると信じています。



沖田晃宗さん

今回、追加オーディションで一番最後の参加になった沖田さん。

ユーチューバーの友城役を好演してくれました。


劇中には出てきませんが、茂木友城は高校時代に女性から自分の自尊心を傷つけられた過去があります。

その経験が医大生時代に女性への蔑視へと変わっていき、ユーチューバーとして活動の中で男性からみた「女性=悪」という認識が徐々に変わり、最終的には人間の本質を知る為に異世界に飛び出す。


友城視点だけで一つ作品が作れるほどのスケールでしたが、沖田さんは少ない稽古時間と少ない出演時間の中で上手く演じていたと思います。

今回、そしてこれからの経験を内面的成長に変えていくことが彼の飛躍の鍵になるのではないかと考えています。



桜龍さん

前回に引き続いての出演でした。今回も前回と同じく劇中で二役を演じて頂きました。


毎回その引き出しの多さには驚かされます。

良介の上司で晴夏の元上司の森田役では、異性を別の生き物として捉え扱う現代社会の男性像の一つの典型演じ、また大学教授で晴夏の恩師であり劇中、晴夏の一番の理解者だった近藤役では、森田とは正反対の人格を演じました。


忙しい中にあっても常に作品に求められているキャラクターやシーン作りを徹底し、それでだけなく、他のキャストにも目を配る座長的な役割を担って頂きました。

演技に対する情熱、作品やシーンに対する解釈、解釈に向けた努力、どれを取っても役者の鏡のようで、若いキャスト達に与えたよい影響は計り知れません。

そのなかでひとつあえて言わせて頂くとすれば、過去の経験から頭の中で固まってしまっている、わずかながらも重要な部分の本質を内証することができた時にあるいは新しい世界が開けるのではないかと思います。


大関愛

今回含め過去三作品全てに出演してくれていますが、今回はまず孤独との戦いだったのではないかと思います。

今回は、白組で佐藤役、赤組で紗希役を演じて頂きました。


紗希自身が孤独な人間であることに加え、赤白それぞれの京子、晴夏のシーンが爆発的に出来上がっていくのに対して、相手役の不在で中々稽古そのものができず、悶々としていたことと思います。

また役作りの中で、水商売や援助交際をして子供を育てている紗希という人間を演じる上で、紗希という人間に近づく努力、稽古場の外での努力を誰よりもしていたのではないでしょうか。


今回、ダブルキャストということでどうしても姜さんとの比較になりますが、元々の魅力を生かす姜さんと、技術と努力で役にアプローチする大関だったと思います。

大関は、技術はもちろん、一人間として成長するほどに魅力が増していくと信じています。


小生

今回で三回目の作・演出でした。毎度毎度、作品作りに携わってくれる全ての方々には感謝しかありません。突然の取材にも関わらず自身の壮絶な経験を包み隠さず語って頂いた性被害経験者の方を始め、脚本の際に女性の視点を提供して頂いた方々、めちゃくちゃになったスタジオを見ても「スタジオ壊さないでね」と一言で済ませて頂いた平賀スクエア社長の平賀さん。公演を影で支えてくれたアクトメンバーの大島、順香、またフライヤー、ガイドブック製作、脚本の校正などを担当した大関、そしてスタジオに足を運んでくださったお客様、改めて深くお礼申し上げます。

とにかくこの御恩、いつか必ずお返しします。

改めまして、皆様本当にありがとうございました。また逢う日まで!



2018.12.31 安城 龍樹